山ノ内町立志賀高原ロマン美術館は、1998年に開かれた長野冬季オリンピック、パラリンピックの開催を記念して1997年秋にオープンしました。
建築は、日本を代表する世界的な建築家・黒川紀章氏の設計によるもので、「自然との共生」をテーマに周辺の環境と調和しながらも、独自性を主張しています。
建物は、美術館棟とレストラン棟の2つから成っています。
美術館棟は、地上2階建てで、高さ15mの吹き抜けのホールを中心に、そのまわりを2階展示室がぐるりと囲む、全体としては楕円形に設計されています。
外壁はコンクリートにチタンチップを埋め込んでおり、エントランスにはガラス窓から自然光がふりそそぎ、壁面にうつし出される光と影が刻々とその表情を変えながら季節と時間のうつろいを伝えてくれます。
レストラン棟は円錐で、遠くからでもランドマークとなる印象的な形です。
同様の円錐は、美術館の吹き抜けのホールの12体の展示ケースにも用いられています。
デザインした黒川氏は、整然と並ぶこの円錐形によって志賀高原の森を表現しました。この円錐をテーマにした、黒川氏ご自身による詩を最後にご紹介します。





円錐の秘密

円錐は神の幾何学か。
水平の断面は
ニュートンの円軌道。
傾斜の断面は
コペルニクスの楕円軌道。
天空を刺し
天空へと消える幾何学。
寺院のいただきに冠(かむ)された鉛の円錐。
サンクトペテルブルグの円錐。
街のスカイラインの
黄金のスパイアー。
長距離弾道(だんどう)の狂気。
円錐の秘密。
円錐は神の幾何学か。



上から見た志賀高原ロマン美術館